中国向けWebサイトのサーバーはさくらVPSにしたほうがいい理由
中国向けWebサイトを制作する際に、もっとも重要なのがサーバー選びです。
中国ではグレートファイアウォールと呼ばれる政府の検閲システムによって、中国からはアクセス出来ないサーバーが存在します。そのため、せっかく作ったWebサイトに中国からアクセス出来なかったり、たとえアクセス出来ても、物理的な距離があるため表示が遅くなってしまう場合があります。
今回は中国向けWebサイトを制作する際のサーバー選びのポイントと、弊社がさくらVPSをおすすめする理由を解説いたします。
なお、今回の対象はコーポレートサイトなどの静的サイトです。ECサイトなどの動的サイトについては別途解説いたします。
中国向けWebサイト制作におけるサーバー選びのポイント
中国からのアクセスにおける2つの障害
中国からのアクセスにおいて大きく問題になるのが、先述した「グレートファイアウォール」と「物理的な距離」です。
グレートファイアウォールは中国政府が有害と認めたWebサイトを、中国国内からアクセス出来ないように遮断してしまうシステムで、対象となるWebサイトは日々更新されています。
例えば2022年12月現在では、Google、Facebook、Youtube、Instagram、Amazon、LINEといった、日本で広く使われているサービスが、中国からはアクセス出来なくなっています。
もう一方の物理的な距離の問題は、中国からアクセスする際に距離が遠いので通信回線の距離も長くなり、その分表示が遅くなる問題です。
日本国内のユーザー向けにWebサイトを運営している場合は、ほとんど意識をすることが無いかもしれませんが、中国ほど距離が離れてしまうと影響が出てきます。理論上は、サーバーの場所が中国から近ければ近いほど表示速度が速くなります。
中国向けのWebサイトのサーバーを選ぶ際は、この2つの問題を考慮する必要があります。
グレートファイアウォール対策
弊社でいくつかのWebサイトを調査したところ、GoogleやAmazonといったサービスが中国からアクセス出来ない関係で、GCP、AWSといったGoogleやAmazonが運営しているクラウドサーバーはアクセス出来ない、もしくは表示が遅くなる傾向があることがわかっています。
グレートファイアウォールの規制対象になっているサービスと関連したサーバーは、中国向けWebサイトのホスティングサーバーとしては使わないほうが良いでしょう。
中国のサーバーは現地法人が無いと使えない
物理的な距離の問題への対策として、中国国内のサーバーを使うという選択肢があります。
当然中国国内のサーバーを使えば、ユーザーからの距離は近くなりますので、その分表示は速くなります。
しかし、中国国内のサーバーでWebサイトを公開するにはICP登録・ICPライセンスと呼ばれる政府の審査を経た許認可を取得する必要があります。このICP登録・ICPライセンスは中国現地法人が無いと取得できないため、日本企業はまず現地法人を設立する必要があります。
Webサイトのためだけに中国現地法人を設立することは時間も費用もかかりますので、弊社ではおすすめいたしません。
そのため、日本国内のサーバーで、2つの問題を解決出来るサーバーを探す必要があります。
物理的な距離への対策
では日本国内のサーバーで物理的な距離の問題に対してどのような対策が取れるでしょうか。
結論から言うと、物理的な距離に対しては直接的に有効な対策はありません。サーバーの場所を北海道にするか、東京にするかなどでわずかな違いはありますが、中国からの距離を考えると大きな違いは有りません。
そのため、物理的な距離によるレスポンスの遅延は、その他の部分でカバーするしかありません。その対策の1つとして、スペックの良いサーバーを選ぶということがあります。
サーバーにはCPU、メモリ、ストレージの種類といったスペックの違いがあります。中国向けWebサイトでは、日本国内のユーザー向けには少しオーバースペックと感じるぐらいのサーバーを意識的に選んだ方が良いでしょう。
VPSを選ぶべき理由
サーバーにはいくつかの種類がありますが、中国向けWebサイト制作においてはVPSを選ぶ必要があります。
VPSとは
VPSとはVirtual Private Serverの略で、日本語に訳すと「仮想専用サーバー」となります。
サーバーには1台のサーバーを複数のユーザーで共有する「レンタルサーバー」や、物理的なサーバー1台をまるごと利用出来る「専用サーバー」などがありますが、VPSは1台のサーバー上で仮想的に複数のサーバーを構築することで、複数のユーザーがそれぞれの専用サーバーのように使うことが出来ます。
たとえば、通常レンタルサーバーは複数のユーザーで共有するのでコストが安い代わりに、サーバーの設定や、使えるソフトウェアなどの自由度が低く、他のユーザーの影響を受けやすいというデメリットが有ります。
一方で、専用サーバーは自分ひとりで使えるので自由度が高い代わりに、コストも高額です。
VPSは専用サーバーのように自由度の高い使い方ができ、レンタルサーバーのようにコストが抑えられるという、両方のいいとこどりのような特徴があります。難点としては自分で様々な環境を用意する必要があるので、ある程度知識がないと扱いづらいということが挙げられます。
VPSは細かな環境設定が出来る
VPSは先述の通り、環境や設定を細かくカスタマイズすることが出来ます。
例えばWordpressでサイトを制作する際の一般的な環境はLinux+Apache+MySQL+PHPの頭文字を取ってLAMP環境と呼ばれますが、それぞれのレイヤーごとにアクセラレーターの導入やキャッシュの設定などのチューニングを行うことで、レスポンスの速度を上げることが出来ます。
日本国内ユーザー向けのWebサイトでは、本来そこまで表示速度にこだわる必要はありませんが、中国からのアクセスという物理的な距離のハンデを埋めるためには、その他のあらゆる部分で表示の高速化を目指す必要があります。
さくらVPSをおすすめする理由
VPSのサービスを提供している会社はいくつもありますが、弊社はその中でも以下の2つの理由から、さくらインターネット株式会社の提供する「さくらVPS」をおすすめしています。
スペック
物理的な距離によるレスポンスの遅延をカバーするために、ハイスペックなサーバーを選んだ方が良いという説明をしましたが、さくらVPSはストレージが全てSSDとなっています。SSDはデータの読み書きが速いので、表示速度の向上に繋がります。またその他のスペックについては、いくつかのプランが設けられています。
日本国内向けとして1Gまたは2Gプランがおすすめされていますが、中国向けの静的なWebサイトの場合、最低でも2G、できれば4Gのプランが望ましいです。
約款
さくらVPSには他のサーバー会社にはない、以下の国外向けのコンテンツ・サービスに関連した約款があります。
第15条(禁止事項)
1.利用者は、次の各号に該当する行為又はそのおそれのある行為を行ってはなりません。
略
(15)適用法令に違反する行為(日本国以外の国の法令が適用される利用者については、当該法令に違反する行為を含みます。)
中国向けに情報発信をすると中国の法令が適用される利用者にあたる可能性があり、中国政府が定める違法コンテンツ(安全保障に関わる内容、風説の流布、わいせつ・暴力的な内容、個人の名誉棄損・プライバシーの侵害等)は発信することが出来ません。
通常の商用Webサイト制作において、上記の約款に抵触することはまず無いと思いますが、万が一違反する行為があった場合は、さくらインターネット株式会社からサイトの停止などの措置が取られる可能性があります。
この約款の目的は一部のユーザーのコンテンツによって、さくらVPSのサーバー全体が中国をはじめとした外国からブロックされるリスクを回避するためと考えられます。
そのため弊社では、さくらVPSが他社のサーバーに比べて、グレートファイアウォールのアクセス禁止対象になるリスクが低いと考えています。
まとめ
以上の理由から、弊社ではさくらVPSの4Gプラン(東京リージョン)をおすすめしております。
Web制作における日本と中国の違いについて、詳しく知りたい方は下記のリンク先ページもあわせてご覧ください。
参考:中国向けWeb制作のポイント
他社のサーバーを使いたい等のご要望にも柔軟に対応させていただきますので、中国向けWebサイト制作に関するお困りごとがございましたら、お気軽にご相談ください。