中国人はなぜEメールを使わないのか

中国人はなぜEメールを使わないのか

中国ではプライベートでほとんどEメールを使わないため、個人のメールアドレスを持っていない人もいます。

そのため、お問い合わせなどのカスタマーサポートや、メルマガといったWebマーケティング施策についてもEメール以外の手段が求められます。

今回はなぜ中国人がEメールを使わないのか、また、それが中国向けのWeb制作やWebマーケティングにどのような影響があるかについて解説します。

中国人は本当にEメールを使わないのか

中国人がEメールをあまり使わないということを示す資料として、興味深いデータがありました。

モバイル専門の調査機関であるMMD研究所が2022年11月に発表した「日米中3ヶ国都市部スマートフォンユーザー比較調査」によると、週に1回以上利用しているアプリとして、日本ではEメールが63.2%で2位となっているのに対して、中国では42.2%で14位と、実際にEメールがあまり使われていないことがわかります。

逆に中国ではWeChatなどのメッセージアプリが86.6%と、日本以上に使われており、メッセージアプリがコミュニケーションの主流になっています。

ではなぜ中国ではEメールが使われないのか、その理由を日本と中国のインターネット普及の歴史とともに紐解いてみます。

日本ではインターネットの普及とともにEメールが普及した

日本のインターネット普及率推移

上図は日本のインターネット普及率の推移に、PC保有率、携帯電話保有率、スマートフォン保有率を加えたグラフです。

日本の場合、9割近い世帯にインターネットが普及した2003年には、PCの保有率も8割近くあり、多くの人がPC用の個人のメールアドレスを持っていました。

それに加え、2003年には携帯電話の普及率も9割を超えており、1999年にはiモードやEZwebといったモバイルインターネットサービスも始まっていたため、多くの人がキャリアメールという携帯電話会社に紐づいたメールアドレスも持っていました。

当然ですが、当時はスマホもなくLINEも無い時代ですので、日本ではインターネットの普及とともに、Eメールが主流のコミュニケーション手段として定着しました。

中国ではインターネットの普及とともにメッセージアプリが普及した

中国のインターネット普及率推移

上図は中国のインターネット普及率の推移に、モバイルインターネット普及率、スマートフォン保有率を加えたグラフです。

日本でiモードが始まった2008年頃、中国でも3Gによるモバイルインターネットサービスが始まりましたが、その時点で、一般の家庭ではまだ20%程度しかインターネットが普及していませんでした。グラフを見てわかるように中国ではインターネットの普及=モバイルインターネットの普及なのです。

そして、スマートフォンが出始めた2010年頃でも、モバイルインターネットの普及率はまだ20%程度しかなく、スマートフォンが普及していく中で、一般市民の間にインターネットが広がっていきました。

そのため、スマートフォンで初めてインターネットに触れる人も多く、初めからメッセージアプリが存在していたため、Eメールを使う必要はありませんでした。こういった背景もあり、中国は社会全体が個人のメールアドレスを持っていることを前提としていない仕組みになっています。

なお、余談ですが中国のインターネットは2022年にようやく75.6%になりました。IT先進国のイメージもある中国ですが、国土が広く、格差も大きな中国において、日本から見えている部分はその一面なのです。

※中国インターネット情報センター(CNNIC)第51回「中国インターネット発展状況統計報告書」

Eメールは、仕事では使うが、プライベートでは使わない

メッセージアプリが主流の中国ですが、ビジネスシーンではEメールが使われています。

その背景として、家庭よりも先にインターネットが普及したオフィスでは、PCでEメールを使うスタイルが既に定着していたことがあります。

また、海外とのやりとりは共通のメッセージアプリが無いのでEメールの方が便利だったり、メッセージアプリでのやりとりは個人の携帯にしか履歴が残らないことなどもあり、Eメールがそのまま使われているようです。

最近ではWeChatが企業版のサービスを始めたりと、ビジネスシーンでもEメールが少しずつ使われなくなってきているものの、BtoBビジネスにおいては日本との違いをそれほど強く意識する必要はありません。

一方でBtoCビジネスに関しては、日本と事情が大きく異なります。

中国では普段の生活の中でEメールを使うシーンはほとんどなく、そのため、プライベートのメールアドレスをそもそも持っていなかったり、持っていても受信トレイを滅多にチェックしないといったユーザーも多いのが実情です。

Web制作やWebマーケティングへの影響

ECサイトなど一般消費者向けのWebサイトでは、ユーザーがメールアドレスを持っていないことを前提に制作・運営する必要があります。

いくつか具体例を挙げます。

会員登録

中国ではECサイトなどのWebサービスで会員登録の際に、メールアドレスではなく携帯電話番号にSMS(ショートメッセージ)で送られてきた認証コードを使って会員登録をすることが一般的です。

メールアドレスを必要とする会員登録フォームは、中国ユーザーが煩わしいと感じ、離脱率が上がる要因になります。

携帯電話番号での認証に加えて、中国で広く使われているWeChatなどのSNSアカウントで会員登録ができるソーシャルログイン機能があればなお良いです。

問い合わせ

中国では問い合わせも、フォームなどを使ってメールを送信したり、記載されたメールアドレスに直接メールを送るのではなく、チャットで問い合わせをすることが一般的です。

Taobao、Tmall、JD.comといった中国の大手ECサイトでも、メールアドレスは記載されておらず、全てチャットで問い合わせをする仕様になっています。

メールでしか問い合わせができないと、購入意欲の高いユーザーが問い合わせを躊躇してしまい、販売機会を逃してしまいます。

メルマガ

リピート購入の施策やファンコミュニケーションの手段として、日本ではメルマガが活用されていますが、中国ではそもそもメールアドレスを登録してもらいにくい上に、仮に登録してもらっても、メルマガはほぼ見られません。

顧客とのコミュニケーションはWeChatなどのSNSで行うことが一般的なので、WeChat公式アカウント(日本のLINE公式アカウントのようなもの)などをフォローしてもらう施策が必要になります。

まとめ

以上、中国でEメールが使われない理由と、Web制作やWebマーケティングへの影響について解説しました。

中国向けのWeb制作・Webマーケティングはインターネットの規制以外にも、このようにユーザーの習慣が大きく異なります。

特に越境ECなど一般消費者をターゲットにしたBtoCビジネスでは、より違いが顕著で、中国人の習慣に対応しているかどうかが売上に大きく影響します。

弊社では中国向けに特化したWeb・EC制作を行なってきた経験から、中国人の習慣に最適化された中国向け越境ECソリューションをご提供しております。

中国向けのWeb・EC制作をご検討されている方はぜひお気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

黒田淳貴
黒田淳貴クーパル株式会社 代表取締役
1982年生まれ横浜市出身。
2007年 慶應義塾大学商学部卒業。卒業後、製造業コンサルティング会社に勤務。
2009年 商社駐在員として中国深センに5年間駐在。現地法人代表を務める。
2014年 クーパル株式会社を創業、プログラミングを習得し、中国向けのWebサイト・通販サイトを制作。
中国語の出来るWebエンジニアとして、中国向けのWeb制作やWebマーケティングについての情報を発信している。
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