Shopifyで中国向け越境ECサイトを作ってはいけない理由

Shopifyで中国向け越境ECサイトを作ってはいけない理由

ECサイト構築ツールとしてshopifyを使う企業が増えています。プログラムの知識が無くても簡単にECサイトを作れるということに加え、越境ECに強いという理由でShopifyを選択する企業も多いようです。

しかし、中国向けの越境ECサイトをshopifyで作ってはいけません。

この記事ではなぜ中国向け越境ECサイトをshopifyで作ってはいけないのかを解説します。

shopifyとは

shopifyはプログラミング知識不要で1000種類以上のテンプレートをもとに、簡単にECサイトが作れるサービスで、公式サイトによると、shopifyで制作されたオンラインストアは世界170カ国以上で数百万にのぼり、近年は急激にユーザーが増えていることからAmazonキラーとも呼ばれています。

日本では類似のサービスとしてBASEやSTORESといったサービスがありますが、shopifyは多言語・多通貨に対応していることから、越境ECサイト構築ツールとしての人気が高いようです。

shopifyで作ったECサイトを中国で開くとどうなるのか

越境ECサイトに強いという理由で、中国向けの越境ECサイト制作にもshopifyをお勧めする意見もありますが、実際にshopifyで制作した越境ECサイトが中国ではどのように見えるかを確認してみましょう。

shopifyで制作された中国向けの越境ECサイトを調べたところ、和菓子のとらやがshopifyで作られているようなので、こちらの事例で確認します。(現在は新型コロナによる国際輸送への影響により、一時的に販売を中止しているようです)

shopify中国越境ECサイト表示確認

中国でアクセスすると上図のようにきちんと表示されています。しかしECサイトとしての機能を考えると実際には様々な問題があり、以下でその詳細を解説します。

shopifyで作った中国向け越境ECサイトの問題点

表示が遅い

まず一番大きな問題として挙げられるのは表示が遅すぎることです。

Chromeブラウザの検証ツールで確認すると、日本では4.94秒で開けているのに対して、中国では22.14秒かかっています。
表示まで20秒以上かかると、ほとんどのユーザーは待てずに離脱してしまいます。

ECサイト表示状況日中比較

表示が遅い原因は色々あるのですが、まず第一に中国からshopifyサーバーへのアクセスが遅いことがあります。

下図はPing.peというサービスで、世界各地からの、とらやの中国越境ECサイトへのアクセス状況を調べたものです。

これを見ると、中国からのアクセスだけ極端に遅くなっていることがわかります。

またshopifyでは、画像データなどをCDNを使ってユーザーごとに最適なサーバーから配信することで、快適なスピードを実現していますが、ECサイトで一番最初に読み込まれる本体データだけはshopifyのサーバーにアクセスする必要があるため、改善することができない遅延となります。

もともとshopifyはサーバーを自前で用意する必要がないことがサービスとしての魅力のひとつですが、中国においてはサーバーを変更できないことがむしろマイナスになってしまっています。

shopifyのサーバーは中国で遮断されるリスクが高い

遅いだけでも問題ですが、弊社ではshopifyは中国から遮断されるリスクも高いと考えています。

その理由はshopifyはインフラシステムにGoogleのクラウドサーバーを使っているためです。

Shopify’s Infrastructure Collaboration with Google

中国からGoogleのすべてのサーバーがブロックされているわけではないため、2023年4月17日現在はアクセス出来ていますが、大手のサービスが次々とグレートファイアウォールによって遮断されている昨今の状況では、いつshopifyが遮断されてもおかしくありません。

実際に2022年10月18日〜11月5日の間、突然中国からshopifyにアクセス出来なくなる事態が発生しました。原因はわかっていません。また、2023年3月18日にも再びアクセス出来なくなり、現在は復旧しているものの、いつまたアクセスが遮断されるかわからず非常に不安定な状況と言えます。

費用と時間をかけて制作したECサイトが遮断されてしまうことは、大きなリスクと考えるべきです。

動作しない

前述のような表示の遅さや、遮断のリスクといったサーバーの問題を無視したとしても、まだ他にも問題があります。

先ほどのサイト表示状況の日中比較の中国側にひときわ処理に時間がかかっている項目がありますが、これはGoogleのAPIでjQueryのライブラリを読み込もうとしてタイムアウトエラーが起きているためです。

jQuery読み込みエラー

jQueryが読み込めていないと、表示速度が遅くなるだけでなく、ボタンを押しても反応しないなど、ECサイトが想定した通りに動かなくなります。

shopifyではこのように、テーマがデフォルトでGoogleのAPIを読み込む仕様になっていたり、機能追加のためのアプリが中国でアクセス出来ないサーバーと通信することがあるため、ライブラリの読み込み先を変更したり、アプリの使用をやめるといった対応が必要になります。

中国人の習慣への対応

また、shopifyのECシステムは中国ユーザーにとって決して使い勝手が良いとは言えません。

例えば、下図は会員登録画面で、「名」「姓」「Eメールアドレス」「パスワード」の項目があります。

ECサイト会員登録フォーム

一見すると特に問題はなさそうに思えますが、個人のEメールをあまり使うことのない中国ユーザーにとっては煩わしいと感じられ、会員登録のハードルが高くなります。

参考:中国人はなぜEメールを使わないのか

中国では会員登録の際に携帯電話番号で認証することが一般的で、さらに理想を言えばWeChatなどのSNSアカウントを使ってソーシャルログインが出来ることが最も自然に受け入れやすいUI(ユーザーインターフェース)です。

使い勝手が多少不便であっても、どうしてもその商品が買いたいユーザーは我慢して使いますが、ユーザーフレンドリーでないECサイトは、多くの場合、販売機会の損失につながります。

WeChatなどは開発者用のAPIを公開しているので、shopifyでソーシャルログイン機能を作ることは可能ですが、相応の技術力やコストが必要です。

そもそも多言語サイトと中国向けサイトは両立が難しい

多言語・多通貨に対応していることから、越境ECサイト制作にshopifyが選ばれることが多いようですが、前述の通り、中国はインターネットの規制や習慣が他地域とは大きく異なるため、多言語対応の利点がむしろ中国独自の事情に対してはマイナスになっています。

多言語サイトが作りやすいといった理由でshopifyで全世界向け共通のECサイトを作っても、中国で開けない・使いづらいようであれば中国向けに売上をあげることは出来ませんので、多言語に対応している意味がありません。

中国市場をターゲットにするのであれば、中国向けに特化した越境ECサイトを制作する必要がある、というのが弊社の見解です。

まとめ

以上、中国向けの越境ECサイトをshopifyで作ってはいけない理由について解説しました。

結論として、shopifyで作った越境ECサイトは現時点では中国からアクセスできるものの表示が遅く、突然遮断されるリスクもあること、またそのリスクに目をつぶったとしても、中国向けにカスタマイズするには相当の知見や開発力が必要になることから、中国向けの越境ECサイトをshopifyで作ることはお勧めできません。

弊社では中国向けに特化したWeb・EC制作を行なってきた経験から、グレートファイアウォールによる規制の影響を回避しながらも、中国人の習慣に最適化された中国向け越境ECソリューションをご提供しております。

中国向けの越境ECをご検討されている方はぜひお気軽にご相談ください。

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投稿者プロフィール

黒田淳貴
黒田淳貴クーパル株式会社 代表取締役
1982年生まれ横浜市出身。
2007年 慶應義塾大学商学部卒業。卒業後、製造業コンサルティング会社に勤務。
2009年 商社駐在員として中国深センに5年間駐在。現地法人代表を務める。
2014年 クーパル株式会社を創業、プログラミングを習得し、中国向けのWebサイト・通販サイトを制作。
中国語の出来るWebエンジニアとして、中国向けのWeb制作やWebマーケティングについての情報を発信している。
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