中国向け越境ECは大手モールしか売れないは本当か
中国のECは大手モールでしか売れないとよく言われます。特に越境ECの分野では、セミナーなどでも「大手のモールに出店しましょう」と言われることが多いようです。
確かにアリババのセールの売上金額が毎年話題になったりと、大手モールの存在感は大きいですが、自社ECなどモール以外の手段では本当に売れないのでしょうか?
結論から言うと大手モール以外でも売れます。その理由は弊社のお客さまが売っているという事実があるから、と言ってしまうとそこで終わりなのですが、もう少し深掘りして大手モール以外でも売れる理由を解説したいと思います。
大手モールのシェア日中比較
下のグラフは2021年の中国・日本のEC市場で流通総額上位5社のモール(ショート動画プラットフォームを含む)が占める割合を比較したものです。
日本と比較すると、中国は上位の大手モールが市場を独占しているように見えます。
しかし注目すべきは、「その他」が14.1%あることです。ここには6位以下の小規模なモールや、自社EC(自社サイト、WeChatミニプログラム)など様々な形態が含まれます。
全体に占める割合としては小さいものの、中国にも大手モール以外の自社ECで購入する消費者はおり、実際に自社ECで成功している企業も多数存在します。
そして、割合が小さいとは言っても、2021年の中国のEC市場規模は約361兆円※と、日本の19倍以上の規模がありますので、「その他」の部分だけでも、日本のEC市場全体の3倍近い規模になります。
※eMarketerより1ドル130円で換算
越境ECにおける大手モールのシェア
それでは対象を越境ECに限定してみると、どうなっているでしょうか。
下のグラフは2022年第1四半期の中国向けの越境EC市場で上位5社のモールが占める割合を示したものです。
2位のKaolaはアリババグループなので、上位5社のシェア合計は97.0%となっており大手モールが独占していることがわかります。
このデータを見ると、越境ECに関しては通常のECと比較して「大手モールしか売れない」状況と言えそうです。
なぜ中国向け越境ECは大手モールが独占しているのか
ではなぜ中国のEC市場全体で見た時と越境ECとでは、モールの独占度合いが違っているのでしょうか。
その理由の1つが自社越境ECを始めるハードルの高さです。
仮に中国向けに自社ECサイトを制作しようとすると、海外企業は中国国内にサーバーを借りられないため、グレートファイアウォール対策が必要ですし、中国独自の決済手段や習慣への対応など技術・コスト面で非常に高いハードルがあります。
一方で、モールに出店すれば、システムなども整っている上に、モールの集客力を利用できるためメリットが大きく、そのため中国向け越境ECを始めるなら、アリババが運営するTmall Globalなどの大手モールに出店することが一般的な手段となっており、大手モールが市場を独占しているのです。
ところが、いいことずくめに思えるモール出店ですが、中小企業にとってはそう単純な話ではありません。
中小企業にとってモール出店はハードルが高い
そもそも中小企業にはモール出店という選択肢はほぼありません。
その一番大きな理由は、コストが高すぎて大企業でないとそのリスクを取れないからです。
例えば、Tmall Globalでは出店に際して保証金(100〜600万円)、プラットフォーム年間使用料(60〜120万円)、販売手数料(0.5〜5%)などのコストがかかり、それに加えて店舗ページの製作費、運営費、広告費などもかかります。また年間1200万円の売上ノルマを満たさないと店舗資格が解除されます。さらに出店審査も「日本で広く知られた有名ブランドであること」といった基準で行われます。
一般的に月商で数千万〜数億円の売上がないと、利益が出ないと言われており、中小企業にとっては非常に高いハードルがあります。
また、自社で出店できない代わりに、大企業が出店しているモール店舗に商品だけを卸すといった手段もありますが、この方法だと顧客と直接繋がれず、販売戦略も他社任せになってしまうので、長期的に売上を拡大していくことが難しくなります。
そのため、モール出店はあくまで大企業にとって魅力的な手段なのです。
中小企業が中国向け越境ECで売るためには
弊社では中小企業が中国向けの越境ECにチャレンジしたくても出来ないということを課題として捉え、その解決のために自社ECを始めるハードルを下げる方法を長らく研究してきました。
自社ECのハードルが下がり、より多くの企業が越境ECを始められるようになれば、本来は通常のECと同じように自社ECで買う消費者はおり、潜在的な市場はあるのです。
そして、これまで多数の中国向けWebサイトを制作してきた知見、技術をもとに開発したのが中小企業向けの越境ECソリューションです。
このソリューションでは、WordpressをベースにECサイトとWeChatミニプログラムを制作することで、ゼロから自社ECを立ち上げるよりも大幅に制作コストを抑え、またグレートファイアウォールや現地決済手段など中国特有の事情にも対応しています。
これによりモール出店が難しい中小企業でも、小さなリスクで自社ECを使って中国向け越境ECにチャレンジすることが可能になっています。
また、売り場制作にかかる初期投資を抑えることで、予算をSNSの運用や広告といった集客に回すことができ、自社ECでも売れる好循環を作ることができます。
まとめ
以上、中国向け越境ECは大手モール以外でも売れるということについて解説しました。
中国向け越境ECに関する情報は大企業に向けたものが多く、その内容が本当に自社にも当てはまるのかを、きちんと検証する必要があります。
また、市場規模の大きさなど、全体的な話が話題になりがちな中国向けの越境ECですが、そもそも月商数百万〜数千万円を目指す中小企業にとっては、全体の傾向よりも、個別の企業としてどのように集客し、どのように売っていくかということの方がはるかに重要です。
中国向けの越境ECをご検討されている方はぜひお気軽にご相談ください。